会期:2025/11/27(木)-12/7日(日)
秩序と混沌のあいだで、人は自然との距離を広げてきた。
再び地球と呼吸を合わせ、心の静けさを取り戻したい。
Terrestrial — Between Chaos and Order -橋村 豊-
Between Chaos and Order
自然の中に入り、風に揺れる葉や木漏れ日を体感すると、自然と心身が落ち着き、心の中のストレスが少しずつ解放されていくように感じる。それは必ずしも有名な景勝地である必要はなく、身近な自然や庭やベランダの植物たちを通じても感じることができるだろう。それは、人間が長い進化の過程で、自然と共に生きることが当たり前の存在であったからだ。人間の進化の長い歴史を月曜日から日曜日に例えれば、近代社会が始まったのは日曜日の午前0時の3分前に過ぎない。長い間、自然と共生してきた人間も、いつしかそのことを忘れ、自然環境を分離した思考と行動によって環境を悪化させ、気候変動を引き起こした。そのことに危機感を持ったフランスの哲学者、ブリューノ・ラトゥールは、人間が再び地球と深く繋がり、自然環境と調和して生きることを意味する『Terrestrial』という概念を提唱した。しかし、人間活動の結果として悪化したのは、自然環境だけだろうか?確かに文明の発展により、便利で快適な生活を手に入れたが、不寛容な社会、増加する孤独感や犯罪、そして精神的な健康の悪化など、殺伐とした現代社会における問題が次々と浮かび上がっている。今後、さらなるデジタル化が進み更に便利な世の中へと変容していくだろう。結果、私たちが自然からさらに離れていけば、心の健康だけでなく、人間社会そのものが持続不可能な状態に陥る可能性が高まるだろう。便利さの裏側には、人の心の健康が損なわれるリスクがあることを忘れてはならない。本来、地球という一つの生態系の中で共存すべき存在だということを忘れた私たちは、もう一度自然との関わり方を見直す時期にきている。それこそが、持続可能な未来を切り開く鍵となるだろう。

